血液培養でアシネトバクター

本日の相談

繰り返す誤嚥性肺炎で、タゾバクタム/ピペラシリンを投与中(2回目)の患者さん。血液培養でアシネトバクターで検出されたので、どうしましょう、との相談。

状況

80歳台男性で、誤嚥性肺炎、心不全で入院している。誤嚥性肺炎は直近で繰り返している。セフトリアキソンからescalationし、タゾバクタム/ピペラシリンで治療を開始し、白血球やCRPは改善傾向。ルートがなくなり、CVを挿入した時にとった血液培養でAcinetobacter baumanniiが1/4出ている。感受性はタゾバクタム/ピペラシリンに耐性、となっている。

血液培養でアシネトバクターが出た場合の解釈は?

基本的にグラム陰性桿菌が血液培養から出た場合はコンタミネーションと考えてはいけない。Acinetobacter baumanniiの場合、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9145732/によると、真の可能性は81.2%だ。ということは、コンタミと侮ってはいけない。

アシネトバクターは院内環境菌であり、健常人の感染源にはならないが、弱っている患者さんの院内感染の原因菌になる。感染フォーカスはというと、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26739074/、1番肺炎(院内肺炎)、2番菌血症(カテ感染による、または、ステロイド投与など免疫抑制状態)が、多いようだ。

耐性に注意が必要!

Acinetobacter baumannii は、もともとアンピシリン、セファゾリン、セフトリアキソンにもともと耐性です。効果が期待できるのは、スルバクタム、カルバペネム、キノロン、アミノグリコシドなどになってきます。

また、これらにも効かない高度耐性菌が特に海外で問題になっているようですが(米国では30%がカルバペネム耐性という報告も)、自分の病院ではまだ高度耐性を経験したことはありません。JANISのデータを見ても、0.11%程度ですので、まだまだ大丈夫そうです。しかし、耐性化しやすいのは確かで、抗菌薬の適正使用の継続の必要性を感じる菌といえます。

スルバクタムの解釈がいつもとは違う

Acinetobacter baumannii は、スルバクタムに感受性があると書きましたが、商品名ユナシンに代表されるスルバクタム/アンピリシンではなく、スルバムタム自身が効果を示すようです。つまり、通常はβラクタマーゼをスルバクタムが阻害し、アンピシリンが殺菌作用を発揮するのですが、アシネトバクターに対してはスルバクタム自身が効果を発揮するのです。ただその投与量は6g/日、となっており、ということはスルバクタム単剤では日本では売られていないので、スルバムタム/アンピシリンに換算すると、18g/日となってしまい、通常量の倍近くになってしまいます。

そんな投与量使ったことないけど、大丈夫なのかな、と思いますね。もし18gでいく時は、腎機能や肝機能の悪化を慎重にモニターしなくてはいけなさそうです。

今回の感受性は?

今回の感受性結果を見ると、セフェム、ペニシリンに対してはRで順当に耐性。カルバペネムとキノロンに対しては感受性S、となっていました。

状況としては、タゾバクタム/ピペラシリンでもある程度改善してきていたので、切り札のカルバペネムではなく、キノロン系であるレボフロキサシンに変更して様子を見ることになりました。

その後

肺炎からの菌血症だったのでしょう。いったんよくはなりましたが、その後嚥下機能の改善見込めずにお看取りの方針となりました。

taku

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