初期抗菌薬はスルバクタム/アンピシリンでOK?
本日の相談
独居の70代男性、肺炎の診断で入院、初期抗菌薬は何にしましょうか?という相談。基礎疾患は糖尿病やステロイド投与など免疫に関係するものはなさそう。
市中肺炎で狙うべき菌
市中肺炎であることはわかっている。市中肺炎の原因菌になる細菌をまずは整理してみる。
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)
- ブランハメラ・カタラーリス
- マイコプラズマ
抗菌薬は?
肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブランハメラに効く抗菌薬をまずは考えます。スルバクタム/アンピシリン、第三世代のセフェム系(セフトリアキソン)など、いわゆるβラクタム系抗菌薬が通常はカバー範囲内です。ただ、細胞壁がないマイコプラズマはペニシリンやセフェムのようなβラクタム系ではカバーできませんので、もしマイコプラズマも狙うなら、マクロライド系のクラリスロマイシンや、アジスロマイシン、テトラサイクリン系のミノサイクリンなどが必要となってきます。
一例として、腎機能問題ない場合で、スルバクタム/アンピシリン1回3gを1日4回+クラリスロマイシン1回200~400mgを1日2回、などでしょうか。
マイコプラズマ狙いはいるのかどうか?
毎回毎回市中肺炎が来るたびに、スルバクタム/アンピシリン+クラリスロマイシンのセットで!、っていうのは抗菌薬適正使用においてよくないです。患者背景や重症度から考えて、+クラリスロマイシンが必要かどうかはその時々に応じて決める必要があると思います。以下のガイドラインを参考に考えます。
日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドライン2017
- 年齢60歳未満
- 基礎疾患がない、あるいは軽微
- 頑固な咳
- 胸部聴診所見が乏しい
- 痰がない、あるいは迅速診断法で原因菌らしいものがない
- 末梢白血球数が10,000/μL未満である
のうち4項目以上合致すれば非定型肺炎を疑う、とあります。
本症例はどうか
基礎疾患がない、しかひっかかってません。
また、患者さんの状態も酸素量、意識レベル、血圧どれもまだ余力がありそうです。
以上から、主治医と相談し、スルバクタム/アンピシリン1回3g1日4回のみでの投与とすることになりました。
経過
次の日の採血で白血球も低下。その後解熱、培養は、Geckler2の品質でViridans Streptococcusしか検出されず、あまり参考になりませんでした。そのまま、オーグメンチン+サワシリンに変更となり、順調に経過し、退院となりました。