腎盂腎炎・感受性は良好!
本日の介入
血液培養でグラム陰性桿菌が出ている80歳台男性。診断は腎盂腎炎。初期抗菌薬はスルバクタム/アンピシリンで開始中。経過は、熱型、白血球、CRPともに右方さがり、ちょっとCRPの下がりが鈍いが特に問題なさそう、という方で、血液培養の菌が感受性良好な大腸菌と本日判明。さて、アセスメントは?。
投与期間について
男性の尿路感染は複雑性尿路感染にあたる。カルテを遡ってよくみると、排尿障害が以前からあり、シロドシンが出ている。前立腺に何か問題があるようだ。そこらへんからこの感染が来たのかなーと予想。
以前にも書いたように、最近は単純性の尿路感染であれば抗菌薬は血液培養が陽性になろうと1週間で良いという風にはなっているが、今回の抗菌薬は複雑性に当たりそうだから、2週間が妥当だろう。
De escalationは?
スルバクタム/アンピシリンは頻繁に使われる抗菌薬であるが、狭域抗菌薬とは言い難い抗菌薬だ。グラム陽性球菌から陰性桿菌、横隔膜より上の嫌気性菌と幅広くカバーしている。今回はターゲットは大腸菌と決まったわけだから、もう少し狭めたい。なので、嫌気性菌のカバーがはずれるセファゾリンを提案した。80歳台と高齢なこともあり、投与量は1g1日3回となった。
さらに内服考慮
セファゾリンに変えてそれで終わりではない。経過がよければさらに内服変更もチャレンジしたい所。内服変更を満たすのにいつも参考にしているのは、ノッティンガム大学病院のCOMSという基準だ。
C:Clinical improvement・・・臨床的改善あり
O:oral route is not compromised・・・口から薬を飲める
M:markers showing trend towards normal・・・簡単に言うと解熱してバイタルが正常に戻りつつある
S:Specific indication・・・常駐抗菌薬長期投与が必要な深部の感染ではない
これらを満たせれば、薬剤師としてはさらに内服変更を推奨したい。セファゾリンは第一世代セフェムなので、セファクロルを少し減量して1回500mgを1日2回でどうかと提案。
まとめると・・・
まずはスルバクタム/アンピシリンで開始。
4日目で血液培養大腸菌が判明、セファゾリンに変更提案。
8日目でCOMSを満たしたので、セファクロルに変更提案。
14日目で投与終了。
15日目で退院、となった。
今回の感染の原因になった排尿障害は前立腺疾患について精査は(年齢的に)希望されていないようなので、退院時には現在出ているシロドシンをきっちり内服し、調子が悪ければかかりつけの泌尿器科で相談するように話しました。