人工弁のIEです!

本日の相談

70歳台後半の方で、何年か前に弁置換術後。一ヶ月前から発熱が続くので、受診し人工弁の感染性心内膜炎の診断とのこと。さて、抗菌薬どうしましょうか?、との相談。

想定する菌は

感染性心内膜炎の場合、一般的に想定する菌は、3種類です。Streptococcus、Styaphylococcus、Enterococcusの3種類。耐性菌(MRSA)も含めて考えます。

感染性心内膜炎の場合、抗菌薬は培養判明後、菌がわかってから決めるのが一番良いが、それは患者の状態(待てるかどうか)による。今回は熱が出て、白血球やCRPも高いので、エンペリックに抗生剤を開始する予定となった。

エンペリックな抗生剤は?

培養判明まで、Streptococcus、Styaphylococcus、Enterococcusの3種類。耐性菌(MRSA)をすべてカバーできる抗菌薬となると、バンコマイシンがメインとなります。スルバクタム/アンピシリンではMRSAをカバーできないし、セファゾリンではEnterococcusをカバーできないからです。仮にメロペネムにした所で、MRSAやEnterococcus faeciumはカバーできません。

加えてサポート役として、ゲンタマイシンを1回1mg/㎏を1日3回併用します。これは相乗効果を狙ってのことです。あとは±リファンピシンとガイドラインには書かれていますが、今回はまずは2剤で開始することになりました。

最近ではアンピシリン+セフトリアキソンというのもある

最近では、腸球菌への抗菌薬治療にABPCにCTRXを併用することで、標準的なABPCにGMを併用するのと差がなかったとする報告もあり、こちらの処方も有望かもしれません。

ダブルベータラクタムというと変な感じがしますが、髄膜炎では以前からそういう処方もありますし、効果があるのなら今度一般的になっていくのかもしれません。

https://academic.oup.com/ofid/article/8/4/ofab102/6160008?login=false#.YEMJS6rojfE.twitter

実際の処方

ということで、腎機能には問題のない60㎏の方だったので、まずは

バンコマイシン1回1g・1日2回+ゲンタマイシン1回60mg・1日3回

で、開始することとなりました。

・・・1日5回点滴、大変。でもビクシリンなどになると、もっと回数多くなります・・・。

その後の展開

培養結果は血液培養4本しっかりと、陽性。Enterococcusが生えました。

なので、標的治療ということで、

アンピシリン2g・1日4回と、ゲンタマイシン1回60mg・1日3回

で、継続となりました。1回目の陰性確認の血液培養(治療開始3日後)では陰性にならなかったのですが、7日後の血液培養で陰性となりました。ここを初日として6週間投与することになりました。

その後クレアチニンが上昇してきたので、アンピシリン2g・1日2回に減量し、セフトリアキソン2g・1日2回の組み合わせに変更しました。それで、腎機能悪化もおさまったのですが、治療終盤に、今度はAST、ALTが上昇してきて、セフトリアキソンの副作用が疑われました。この時点で、残り1週間の投与期間であったので、再びゲンタマイシンを前回より減量して投与し、再度クレアチニンは上昇傾向となりましたが、なんとか6週間の治療を終えることができました。

今後手術も検討しつつ経過観察で退院となっています。

taku

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