βラクタムで腎機能悪化、その次はアレルギー

今回の相談

感染性心内膜炎の診断がついた人がいるから、一緒にみてほしいという医師からの相談。

患者の状況

70歳台男性不明熱での紹介。僧帽弁閉鎖不全の既往がある。血液培養をとると、Viridans Streptococcusが4本中4本検出。抗生剤は先行してスルバクタム/アンピシリンが開始となっていた。腎機能がもともと少し悪く、クレアチニンクリアランス30ml/min程度であった。

まずは定石通り

まずはサンフォードや感染性心内膜炎のガイドライン通り、スルバクタム/アンピシリンからペニシリンGに変更となりました。腎機能を考えて今回は1回400万単位1日3回で開始。MICが高めであったので、ゲンタマイシンも併用することとなりました。ゲンタマイシンは通常腎機能で1回1㎎/kg1日3回のところ、腎機能を考慮して1日2回で投与することになりました。

抗菌薬を2剤併用するので、もともとよくないこともあり、腎機能の悪化が心配であり、注意してみていこうということになりました。

感染性心内膜炎の抗菌薬投与期間は4週間以上の長い道のりです。

やはり腎機能悪化!

その後10日ほど投与しましたが、継時的に腎機能が悪化し(Ccr30→20)、抗生剤減量か変更かの選択肢を迫られる状況になりました。主治医の判断でセフトリアキソン2g単剤で様子みることになりました。セフトリアキソンは腎機能悪化のリスクが低い薬剤の一つになります。

次なる問題が!

セフトリアキソン開始10日後、別の問題が起きました。

薬疹です!。

抗生剤は、薬剤の中ではアレルギーが多い方の薬です。アナフィラキシーショックはさすがにあまり経験ないですが、皮疹が出る、というのは時々どんな抗菌薬でもありえることです。皮疹が出てしまったら、その抗菌薬はもう使えません。またまた抗生剤変更を余儀なくされました。

次の選択肢は・・・バンコマイシンです。

バンコマイシンはMRSAだけではない

バンコマイシンというとMRSAに使う!と思っている人が多いのですが、そこだけが出番ではありません。今回の方のように、ペニシリンやセフェム系の抗菌薬でアレルギーが起こった場合とか、耐性腸球菌の感染などにもバンコマイシンは良い適応となります。バンコマイシンはMRSAの薬というよりも、グラム陽性球菌全般を広域にカバーできる薬、という認識が良いと思います。

ただ、今回の症例は腎機能が悪いので、そこはまた慎重な対応が必要な所です。血中濃度を測定して、日々モニタリングし、過量投与や過少投与にならないように見ていきたいと思います。

その後

TDMでバンコマイシンの血中濃度を15μg/mlで維持し、エコーで疣贅は器質化し、4週投与、腎機能はむしろ少し改善し、状態が落ち着いた段階で手術となりました。

まとめ

  • 感染性心内膜炎は抗菌薬を4週以上投与することが多い。
  • 長丁場の治療で、抗菌薬の副作用が出ることも少なくはない。
  • ペニシリンやセフェムが使えない場合起炎菌にもよるが、バンコマイシンの選択はあり。

taku

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