βDグルカンがちょっと高いです
本日の相談
透析患者さんで、カテーテル感染疑いで抗菌薬開始し、効果あるものの、本日の検査でβDグルカンが40と高い。しかし、患者さんは解熱し、採血上も白血球やCRP上昇などない。意見が聞きたい、とのこと。
βDグルカンについて
βDグルカンとは、真菌全般の細胞質の骨格を構成する成分で、その検出によって原因菌種の特定はできないが、真菌症全般について検出可能であり・・・みたいな検査で、真菌感染があるなしで必ず調べられる項目だ。
私見だが、この値が20や30では、真菌感染ではなくてもわりとありえる値。
50以上は状況によっては真菌感染があるかもなぁ。
100とか3桁だやったら、さすがに何か感染あるやろう!と思う所です(完全に私見ですが)。
もちろん、現在の臨床状況や、血液培養の結果を合わせて考えることが最も大事。
一つの検査だけで、診断がつき薬が決まるというのはあまりありません。
またβDグルカンを抗真菌薬の治療効果の判定に使用するのは推奨されていません。
βDグルカンが高い場合ありえる感染症
入院患者でβDグルカンが高く、真の真菌感染がある場合・・・どんな感染があるだろうか。
- カンジダ菌血症
- アスペルギルス肺炎
- ニューモシスチス肺炎
- ノカルジア肺炎、でも上がるらしい
カンジダ菌血症であれば、血液培養が陽性になって、熱もすごい出るはず。
アスペルギルス肺炎でも、ニューモシスチス肺炎でも治療していなければ、ただでは済まないだろう。呼吸状態もどんどん悪化していくはず。
βDグルカンの偽陽性について
βDグルカンには偽陽性もありえる。偽陽性というのは、検査が陽性になったけど、偽物だよ、っていう意味。世の中なんでも検査がプラスだから、はいこの病気です、っていう単純なものではないのです。偽陽性の要因には、以下があります。
- セルロース素材の透析膜を用いた血液透析
- 血液製剤の使用(アルブミン製剤、グロブリン製剤)
- ガーゼなど環境中のβDグルカンによる汚染
- β-D-グルカンを含有する経管栄養剤や漢方薬等の使用
- Alcaligence faecalisによる敗血症
- 測定中の振動(ワコー法)
- 溶血検体、高グロブリン血症の出現
推測
エンシュアで、βDグルカンあがるという文献があった。大豆のせいなのか?。となると、本患者はエレンタールを使っているので、その可能性でちょっと高い可能性があるのかもしれない。また、透析膜の影響もありえる。
結局どうなったか?
透析患者であり、偽陽性の可能性もあるのではないかと回答した。また、血液培養も、細菌が検出されたので、カンジダなどはでそうになく、感染は悪化どころか、むしろ先行の抗菌薬で改善傾向にある。抗真菌薬なしで様子見となった。