抗菌薬で血小板減少疑い

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本日の相談

肺炎でスルバクタム/アンピシリンで治療中の高齢の方。治療は順調なのだが、血小板が下がりだしていて、他の抗菌薬を検討している。何かおすすめのものはありますか?、という相談。

詳しい状況

80歳台の男性の方で、基本は誤嚥性肺炎のようだが、ちょっと膿瘍形成の疑いもあり、抗菌薬は慎重に選びたいという状況。喀痰培養はとっているが、口腔内常在菌であったので、StreptococcusやNeisseriaなどカバーできたら十分なのかなという印象。確かにここ1週間かけて抗菌薬開始してから、血小板が下がっており、被疑薬としてはこのスルバクタム/アンピシリンか、同時期に開始したオランザピンがといった所。まずは抗生剤の方を原因として医師は疑っている様子であった。

SBT/ABPCで血小板減少する確率は?

抗生剤で皮疹や下痢などは比較的ありえる副作用だが、血小板減少はそれほど頻度は高くないように思える。インタビューフォームを見てみた。

血小板減少は・・・0.2%、と記載。

あるにはあるんですね。頻度は低い方だと思う。自分の間隔とも一致。

さて、選択は?

と、確認した所で、抗菌薬をどうするか。

スルバクタム/アンピシリンで、連鎖球菌系、口腔内嫌気性菌がカバーできます。スルバクタムが入っているから、ブランハメラやプレボテラがいたとしてもカバー可能。逆に考えると、緑膿菌やエンテロバクターなどの広域なカバーは必要ない、ということになります。

中域という言い方がいいのかどうかはわかりませんが、狭すぎず広すぎずカバーできる部類の抗菌薬で、ペニシリン系でないもの、というのが答えかなぁ。

第一候補としては、セフトリアキソンやセフォタキシムを考えます。同じ範囲をほぼカバーできます。今回は肺膿瘍の疑いもあるとのことなので、嫌気性菌のカバーを確実にするために+クリンダマイシンも良いかもしれません(当院ではBacteroides fragilisの耐性は稀)。

心配としてはペニシリンとセフェムは同じβラクタム系だから、全然違うキノロン系とかの方がいいのか?とも思ったりするが、それは次の手でもよいかもしれない?。

SBT/ABPCとCTRXのスペクトルの違いは?

そういえば、スルバクタム/アンピシリンとセフトリアキソンの違いって何だろう?。

腸球菌はセフェム無効でペニシリンOKだから、まずそこかな。誤嚥性肺炎にはあまり関係のない菌だ。
BLNARとよばれるインフルエンザ菌には、逆にスルバクタム/アンピシリンが効かない。今回は最初に効いていたので、これも関係なさそうだ。

どうなったか

そういうわけで、主治医に提案の結果、セフトリアキソン1回1g1日2回+クリダマイシン600mg1日3回でいってみようということになりました。

その後、白血球、CRP、呼吸数などの増悪はなく、血小板は回復傾向を示し、やはり、スルバクタム/アンピシリンによる血小板減少だったのかなぁ、という結果になりました。

ところで、メカニズムは?

種々薬剤による血小板減少の原因は多々あるようでしたが(そういえばリネゾリドなんかも有名)、ペニシリンなどに限れば、血球膜に薬剤が結合→血球膜・薬剤複合体ができる→抗体がそれを攻撃、という機序のようです。

taku

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