ペニシリンGの持続投与

最終更新日

Comments: 0

本日の相談

連鎖球菌による感染性心内膜炎でペニシリンGの投与についてアドバイスもらえないかという相談。

ペニシリンGは半減期が短い

ペニシリンGは半減期が短く、通常の抗生剤の投与法でいくと、感染性心内膜炎の場合1回4本(400万単位)を1日6回となってしまいます。1日6回も点滴って、4時間ごとってことです。そんなの夜中に起こされる患者さんも、点滴作ってつなげる看護師さんも大変!。

持続投与だと楽かも?

そんなわけで、持続投与という裏技?があります。※添付文書で推奨されている投与法というわけではありません。
ベータラクタム系抗菌薬というのは、時間依存性抗菌薬なので、ピーク濃度はいらない。菌が発育しなくなる抗菌薬濃度を長い時間確保できたらいいやん、という考え方です。

腎機能正常で、24本(24000単位)投与する場合。

初回 ペニシリンG 3~4本(300~400万単位)
   生食 100ml      1時間
(メインの側管から)

に続いて

ペニシリンG 12本(1200万単位)
1号液    500ml   12時間で
(点滴作成は、投与の直前で)

そのあとは、ずっと12本+1号液を投与し続けます。

これだと、何回も点滴作らなくて、多少楽かもしれませんね。ただ、点滴がずっとぶら下がってることになりますが、もともと動けない人だと問題ないかもしれません。

カリウムに注意!

ペニシリンGは1本につき1.53mEpのカリウムが含まれています。

カリウム製剤点滴の際の注意点を確認してみましょう。カリウム製剤は急速に点滴すると、不整脈や心停止を起こします。また濃度が濃いと静脈炎の原因にもなります。
以下の注意が必要です。

  • 必ず希釈して使用すること 40mEq/L以下
  • 投与速度は20mEq/時間以下
  • 1日100mEqを越えないこと

24本いくとなると、36.72mEqなので、500mlに24本だと72mEq/Lになり、濃すぎますね。
また、初回のみの4本+生食100mlだと、6.12mEq/100ml=61.2mEq/Lになるので、これもちょっと濃ゆいので、メインの側管からいって、薄めて投与してもらった方が良いです。

単独で投与する場合には、4本+生食100mlを、1時間で落とす場合には、61mEq/Lとなり、高濃度です。
4本+生食200mlを、1時間の場合は、30.5mEq/Lと許容範囲です。これはつまり、ペニシリンG1本(100万単位)につき50ml以上の溶解液がベター、ということになります。

溶解後の安定性に注意!

持続投与で投与する抗菌薬は、その時間で溶かした抗菌薬が失活しないかも注意が必要です。

インタビューフォームを見ると、2万単位/mlでの残存率は、

  • 生食 9時間:93.3% 24時間:42.5%
  • 5%ブドウ糖 9時間:91.4% 24時間:44.1%
  • ソリタT1 9時間:93.2% 24時間:75.1%

9時間では上記3つとも大丈夫ですが、24時間だと、特に生食とブドウ糖で大幅に残存率が低下します。


12時間で投与しようとしているのだから、肝心の12時間はどうなんや?。

0.9%生理食塩水で26℃で12時間54分で、濃度は90%大丈夫だった、という報告を見つけました。

生食もソリタT1も9時間で93%あるんだから、12時間で90%くらいはありそうですよね。また、8時間ごとに1日3回とかもありだと思います。いずれにしても、投与直前に混ぜた方がよさそうです。当たり前のことのようですが、病棟ではまとめて点滴をつくる時間が決まっていて、遅くなることがあります。

腎機能別投与量

サンフォード

  • Ccr50ml/min以上 通常投与量
  • Ccr10-50ml/min  50~400万単位 8時間ごと
  • Ccr10ml/min未満  50~400万単位 12時間ごと
  • 透析  50~400万単位 12時間ごと 透析日は透析後に投与

腎機能別薬物投与量POKETBOOK

  • Ccr60ml/min以下で 75%に減量
  • Ccr15ml/min以下で 20~50%に減量
  • 透析 20~50%に減量 透析日は透析後に投与

ちょっとわかりにくい書き方ですね。

例えばCcr30ml/minの患者さんなら、12000~18000単位=12~18本/日だから、初回の3~4本は同じで、その後は、

ペニシリンG 6~9本(600~900万単位)
KN1号液   500ml を12時間ごとに投与


6本×2で、1日カリウム18.36meq/L
9本×2で、1日カリウム27.54meq/L と、カリウムについても大丈夫です。

まとめ

  • ペニシリンGの頻回投与が負担になる場合は、持続投与を検討することができる。
  • 持続投与の場合、カリウム濃度に注意が必要。
  • 溶解液によって、長時間での安定性が違うので注意が必要。点滴投与の直前に作成してもらうのがベター。
  • 腎機能に応じた減量が必要。

taku

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントする