抗菌薬の効きが悪いと思ったら感染性心内膜炎
本日の介入
ASTの仕事の一つとして、広域抗菌薬投与患者の状況チェックというのがある。私は週2回行っている。広域抗菌薬使用理由を確認、培養結果や、現在の状況を確認し、可能であれば、終了や変更できないか主治医と相談する、という仕事です。
今回は、バンコマイシン投与患者のチェックをしていると、尿路感染でセフトリアキソンが出ていた患者の抗菌薬の効きがよくなくて、血液培養でグラム陽性球菌が4本生えたために、バンコマイシン開始とあった。そして、そのグラム陽性球菌がViridans groupの連鎖球菌だとわかった、という症例であった。
CTや呼吸状態から、肺炎でない、熱源不明、典型的なCVA叩打痛や、尿が汚いなどの所見がなくても、熱があるので、暫定診断で尿路感染、となっている場合はしばしある。こういうのは、他の感染の可能性があり注意が必要だと思う。
血液培養からViridans groupが出た時は?
血液培養からViridans Streptococcusが出た時は、何が疑われるだろう。喉、消化管、皮膚の常在菌である。
皮膚の常在菌のため、コンタミネーションもありえる。結果が、真であれば臨床的には、感染性心内膜炎または、抗がん剤などで好中球減少している方の菌血症などを考える。肺炎や尿路感染、褥瘡、皮膚の感染を起こすことは稀。
ただViridans goupの中でもStreptococcus anginosus groupは、脳、肺、肝臓、お腹の中などに膿瘍を形成することがあり、病原性が高いので注意が必要です。
本症例は?
CT上肺炎ではない、暫定診断で尿路感染となったが尿から菌はでなかった、セフトリアキソンはViridans Streptococcusに感受性があるが、経過が芳しくない。
⇒抗菌薬が届きにくい感染の可能性⇒膿瘍や、感染性心内膜炎?
持続菌血症の疑いで血液培養再検査と、心エコーで疣贅がないかの確認を推奨した。
その後
心エコーをとると、はっきりと疣贅がみられ、感染性心内膜炎確定的となりました。
ペニシリンG+ゲンタマイシンの抗菌薬変更となり、加療され、現在は経過は良好となっています。
自分の経験的にはこの後手術になる人が多いです。
Streptococcus milleri groupにCTRXはPCGに劣るのか?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33511221/
連鎖球菌といえば、ほとんどの抗菌薬がSになる菌である。CTRXをわざわざPCGに変える必要はあったのか?。
この小規模の研究では、差はなかったとのことです。
しかし、安価で狭域な抗菌薬で治療できるのならば、それに越したことはないでしょう。
まとめ
血液培養からViridans groupが検出された場合は、
- コンタミネーション
- 感染性心内膜炎
- 発熱性好中球減少症
- 頻度は低いが、胆管炎や腹膜炎
を考える。
抗生剤は、感染性心内膜炎の場合はペニシリンで始めて問題ないが、発熱性好中球減少症のような急性の感染の場合は、耐性も考慮してバンコマイシンの使用も検討(S.mitisとS.oralisはペニシリンG耐性もありえる)。