胆管炎の抗菌薬投与期間は?

本日の相談

消化器の先生から電話があり、胆管炎でドレーンチューブ挿入したから、抗生剤(スルバクタム/セフォペラゾン)の投与期間どうしようかな、と相談。もう1週間くらい投与してからやめた方がいいですかね?、というが・・・。

状況確認

70歳台の男性、胆管炎で入院。ENBDチューブ(鼻からチューブを胆管まで通してドレナージする)を留置して、抗菌薬治療中の方。経過は良好で、白血球もCRPもどんどん下がってきている。ただ、胆石は残っているとのこと。

胆管炎の治療は抗生剤よりもドレナージ

胆管炎というのは、胆石が胆道につまって、感染がおこるわけですから優れた抗菌薬を投与するよりも、そのつまっている所を解除することがまず大事になってきます。つまり、つまったままだったらいくら広域なメロペネムで菌をやっつけても、詰まったところに次々と感染が起こってしまうので、治療に限界がある、ということになります。

胆管炎のことはTokyo Guidelineで

胆道系の感染には、便利なTokyo Gudelineというのがあって、TG18と検索すればすぐに出てきます。頻度の高い起炎菌や、抗菌薬投与期間もそこに書かれています。

何でも覚えてしまうのは無理があります。どこに書いてあるか調べる方法を知ることが大事になってきます。
調べ方を学習しなさい!と自分は薬剤師になったころよく指導薬剤師に言われました。

胆管炎/胆のう炎の起炎菌

お腹の中の感染ですから=腸内細菌、嫌気性菌というのはすぐイメージできます。

TG18でも

  1. 大腸菌
  2. クレブシエラ/腸球菌
  3. 緑膿菌
  4. 嫌気性菌

となっており、その中でも圧倒的に大腸菌(30%以上)が多くなっています。

自験例でもほとんど大腸菌とクレブシエラですね。緑膿菌は注意が必要な菌ですが、自施設ではほとんど経験がありません。

抗菌薬は?

上記の菌をターゲットに、重症度とその病院のアンチバイオグラムで選択していく、というのがTG18に書かれています。

軽症で基礎疾患に糖尿病や癌などなくて、様子みれる状況の時は緑膿菌を外して、大腸菌、クレブシエラ、腸球菌、嫌気性菌を狙う=スルバクタム/アンピシリン。

重症で培養結果を待っている余裕がない場合には、緑膿菌含めた上記すべてをカバーできる抗菌薬=タゾバクタム/ピペラシリンやメロペネム。

などが選択肢になると思われます。

バンコマイシンの出番は腸球菌のうちE.faeciumを狙うときなので、過去に培養で出ていたり、重症で抗菌薬を外すことは絶対にできない、という場合に選択肢になりえるかと思います。

今回選ばれていたスルバクタム/セフォペラゾンも、一応緑膿菌、腸球菌、大腸菌までカバーできる抗菌薬です。昔胆汁移行性が良いからという売り文句で消化器系でよく使われるようになりましたが、TG18では結局胆汁移行性がどうのこうのというのは、胆道感染に胆汁移行性が良い抗菌薬が有利というのは、TG18でも明確なエビデンスはないと書かれているので、やや中途半端な立ち位置の抗菌薬なのかなぁ、と思います。

肝心の抗菌薬投与期間は?

TG18では、感染がコントロールされてから4~7日の抗菌薬投与期間。腸球菌や連鎖球菌の菌血症を起こしていた場合には2週間の投与期間(その理由は感染性心内膜炎のリスク=長期の抗菌薬が必要な病気があるから、とされています)

今回の症例にあてはめると?

ENBDチューブが入ってドレナージは良好。基礎疾患もない。胆汁培養は連鎖球菌、血液培養は・・・取られていなかった!!(先生~~)。

まぁ、起炎菌は連鎖球菌、として一応内服に変更して合計2週間ペニシリン(サワシリン)投与することになりました。

その後

経過良好で退院、と行きたかったのですが、再び石が詰まって胆嚢炎になり、手術適応となりました。

taku

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントする