ドキシサイクリンとミノサイクリンの違いは?
今日の疑問
研修医の先生と話していて、ふとドキシサイクリンとミノサイクリンの違いが気になったので、調べてみた。
テトラサイクリン系の抗菌スペクトルについて認識していること
一般的にテトラサイクリン系はある意味メロペネムよりもスペクトルが広い。というのも、通常相手にする市中感染の連鎖球菌から、大腸菌、クレブシエラ、嫌気性菌、さらには、細胞壁のないマイコプラズマやクラミジア、リケッチアなどにも効果があるからだ。
弱点としては、緑膿菌などに効果がないので、院内感染で環境菌として緑膿菌の存在が見逃せない状況などでは単剤では使いにくいという所。
そういう認識でした。
抗菌薬インターネットブックはどうか
ドキシサイクリン、ミノサイクリン
承認菌種としては、ミノサイクリンの方が圧倒的に多い。
ただ、日本で承認が取れてないだけで、実際は有効なのかもしれない?、違いは?、とやっぱり思う。
まとまったレビューを調べてみた
今回は、
Similarities and differences between doxycycline and minocycline: clinical and antimicrobial stewardship considerations
このサイトにまとまっていたので、訳してみた。すると、
- 両方とも、よく効かせるためには、ローディングドーズが大事。ローディングしなかったら、定常状態へかかる時間が遅れて効きが悪い。
- 両方とも、CD腸炎は起こしにくい。
- 尿中の濃度が高くなるので、感受性が悪くても、尿の緑膿菌にも効果ある。
- ドキシサイクリンの方が副作用が少ない(消化器系、光線過敏症)。
- ミノサイクリンには、前庭障害の副作用があるが、食後投与で軽減できる。初期のめまいは数日続けることで、慣れてくることもある。
- ミノサイクリンの注意すべき副作用としては、全身性エリテマトーデスがある(可逆性)。
- ミノサイクリンの長期投与で皮膚の色素沈着があり、不可逆的である。
- ドキシサイクリンは市中肺炎にも選択肢になりうる。
- ペニシリンアレルギーがある場合、梅毒にも選択肢となりうる。
- ドキシサイクリンは耐性が獲得されにくい(ただし、肺炎球菌耐性には注意)。
- 慢性前立腺炎では、ドキシサイクリンもミノサイクリンも組織移行性よいが、ドキシサイクリンの方が安い。
- スペクトル的には、ミノサイクリンはMRSA、耐性アシネトバクター、バンコマイシン耐性腸球菌に対して、点滴治療からの切り替えなどで使える可能性がある。
まとめ
一般的な病原菌に対しての効力は同じ、なのでまずは安くて副作用の少ないドキシサイクリンを使う。
MRSA、耐性アシネトバクター、バンコマイシン耐性腸球菌を、何らかの事情でテトラサイクリン系で狙う場合はミノマイシンの方がいいかも(いずれにしても感受性の確認は必要)。
+日本での添付文書上の適応も考慮して、といった所かなと思いました。
当院では皮膚科でしか使われませんが、もっと使うチャンスはあるように思いました。また、薬剤師的には、ローディングの推奨は必須と感じました。結構医師は忘れてます。