肥満患者のバンコマイシンの投与量はどうしよう?

最終更新日

Comments: 0

本日の相談

重症腹膜炎の患者さんで、エンペリックにメロペネムにバンコマイシンを併用しようと思うが、体重が100kgなので、投与量どうしましょう、という相談。

肥満の基準

BMI = 体重kg ÷ (身長m)2

WHO:BMIが30以上 クラスⅠ(BMI30~35未満)、クラスⅡ(BMI35~40未満)、クラスⅢ(BMI40以上)

日本:肥満1度(BMI25~30)、肥満2度(BMI30~35)、肥満3度(BMI35~40未満)、肥満4度(BMI40以上)

日本のガイドライン通り計算してみると?

腎機能異常がないとして、化学療法学会TDMガイドラインを見てみると、初回30mg/kgで投与開始して、維持量20㎎/kg1日2回となる。

例①体重60kgの場合

初回1800㎎、維持量1回1200㎎ 1日2回

例②体重100kgの場合

初回3000㎎、維持量1回2000㎎ 1日2回となる。

バンコマイシンの初期投与量の上限が4000㎎/日なので、ちょっと多すぎるような気になります。

自分の過去の経験上、理想体重を計算してから、投与設計することが多いのですが、トラフ値が10μg/ml以上が目標の所、ややそれを下回ってしまうことが多いです(ただそれで臨床上効いてなくて困ったことはないです)。かといって、例②にように、体重100kgをそのままあてはめてしまうと、おそらく高用量になってしまいます。

もっと良い方法がないのか調べてみた。

アメリカのガイドライン

https://academic.oup.com/ajhp/article/77/11/835/5810200#203705647

バンコマイシンは体重に応じて分布容積が増大するが、肥満患者では増大するわけではなく、推定困難。同じ体重であれば、肥満患者の方が分布容積は小さい。

肥満患者に対しては、体重に応じた初回負荷量を20~25mg/kgとし、3,000mgを上限とする。
具体的には、体重80~99kgの患者では1,500~2,500mg、100~119kgの患者では2,000~3,000mg、120kg以上の患者では2,500~3,000mgのローディング用量を計算することになる。

肥満患者のバンコマイシン CL の平均値は約 6 L/h であることが報告されており、AUC 500㎎・h/L狙った投与量は6×500の3000㎎/日となる。

例えば、体重100㎏で、Ccr30ml/min(理想体重で補正したCockcroft式)の場合、Ccr30ml/min=1.8L/h。初回投与量は100×20で、2000㎎、維持量は1.8×500=900㎎/日となるので、
初回2000mg、その後24時間ごとに900~1000mg、または12時間ごとに500mg。その後はTDMで調節、って感じになると思う。

Denetclaw氏らの投与方

https://moshp.com/blog/5591375

もう一つおもしろい記事をみつけた。この方法だと、

トラフ10~15μg/ml狙いで、理想体重が85㎏以下、Ccrが60ml/min以上の場合(このパターンが多いと思うが)

1回目 1000mg 6時間ごとで開始(1回量は20mg/㎏をこえない)
2回目 1000mg
3回目 トラフ測定
  10μg/ml未満  そのまま6時間ごとで継続 5回目に再度トラフ測定
  10~15μg/ml  1000mg 8時間ごとまたは1000mg 12時間ごと
  15μg/ml以上  中断し、腎機能に応じた間隔で再開
6時間で継続の場合 
4回目 1000mg
5回目 トラフ測定
  10μg/ml未満 5回目を投与して、8時間ごと1000mgまたは12時間ごと1000mgに変える
  10~15μg/ml 5回目は投与せずに、8時間ごと1000mgまたは12時間ごと1000mgに変える
15μg/ml    中断し、腎機能に応じた間隔で再開
  

理念としては、1000mg6時間でガンガンいきつつ細かくトラフ値を測定して、目標トラフ(10μg/mlまたは15μg/mlを達成したら、通常の投与間隔(maintenance interval)にするという感じですね。

感想

アメリカのガイドラインが使いやすいと思いましたが、本当に一刻を争うようなMRSA感染症では、Denetclaw氏の方法を用いて早期の血中濃度上昇を狙うのも選択肢としてはありなような気がしました。

taku

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


コメントする