ホスミシンは誤嚥性肺炎に使えますか?
本日の相談
ESBL大腸菌の尿路感染からの菌血症疑いでホスミシン投与中の80歳台の患者さんが新たに発熱。新たな感染フォーカスとして、誤嚥性肺炎を疑っている状況ですが、このままホスミシンでも良いか、誤嚥性肺炎にホスミシンは大丈夫なのか?、という相談。
誤嚥性肺炎で必要な菌のカバー
症例毎によるので、喀痰培養を実施し、できれば迅速にグラム染色ができれば菌の推定ができて、抗菌薬が絞り込めることがあります。
エンペリックに投与する場合には、一般的に、口腔内の嫌気性菌や、消化管から上がってくる菌=大腸菌やクレブシエラなどのカバーが必要なので、スルバクタム/アンピシリンが選ばれることが多いですが、「抗菌薬のカバーをもし今外したら亡くなってしまうかもしれない」、という状況であれば、もっと広域に緑膿菌などにまでカバーを広げてタゾバクタム/ピペラシリンなどを選択することもあります。
ホスミシンのスペクトルは?
ホスミシンは通常尿路感染や腸炎に使われることが多く。誤嚥性肺炎で選ばれることはあまりありません。が、抗菌薬は感染の原因菌をカバーできて、その組織に移行すれば何だって効くはずです。
抗菌薬インターネットブックによると、ホスホマイシンがやっつけれる菌はブドウ球菌属、大腸菌、赤痢菌 (内服だけ)、サルモネラ属、セラチア属 (内服だけ)、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア・レットゲリ、緑膿菌、カンピロバクター属 (内服だけ)
に加えて
MRSA、インフルエンザ菌、クロストリジウム属、レンサ球菌、肺炎球菌、淋菌シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、バクテロイデス属
と、書かれています。
誤嚥性肺炎の原因になりそうなのは、大腸菌、プロテウス、レンサ球菌、クレブシエラあたりでしょうか。
おおむねカバーしてそうですね。
しかも、肺への組織移行性も〇で、まぁまぁ良さそうです。
私の回答
ホスミシンは誤嚥性肺炎に、ある程度の効果は期待できるのではないでしょうか。ただ、喀痰培養はとっておいて、悪化すればタゾバクタム/ピペラシリンなどに広げることも想定しておいた方が良いかもしれません。
注!ホスミシンは実は切り札的な抗菌薬の側面も
WHOの抗菌薬Aware分類では、ホスミシンはReserve=最後の手段、に分類されている抗菌薬でもあります(ESBL産生菌に効いたり、耐性緑膿菌に効く可能性があるため)。なので、カルバペネム系やタゾバクタム/ピペラシリンを使わない代わりに安易に使うような薬でもないようです(ま、使い慣れてない先生が多いのであまり出ませんが)。