喀痰からも尿からもMRSA

本日の相談

コロナでADLの低下した方。誤嚥性肺炎や尿路感染を繰り返してきた。直近の培養では、尿からMRSA2+、喀痰からESBL大腸菌とMRSAが出ている。本日再度発熱。尿所見から尿路感染を疑っているが、誤嚥性肺炎もあるかも?、抗菌薬は何にしよう、という相談。

抗菌薬はどうするか?

新型コロナに罹患し、改善はしたが、その後退院できずにADLが低下する患者は多い。感染自体で肺にダメージが残ってしまったり、長期入院で廃用がすすんだり、ステロイドが入って免疫が低下するとかが原因なのかもしれない。今回もそのような経過で、患者が弱り切ってしまったために誤嚥性肺炎や尿路感染を繰り返している状況。年齢は80歳台。過去培養でMRSAとESBL大腸菌が出ていることから、通常であれば、バンコマイシンとセフメタゾール、またはバンコマイシンとメロペネムなど推奨したい所です。セフメタゾールにするかメロペネムにするかは、重症度によるので主治医の裁量に任せたい。

セフメタゾール+バクタに?

主治医の先生の案で、療養病棟であることも考えて、セフメタゾール+バクタはどうか?とあった。一応この患者のMRSAの感受性はSになっていたが・・・、果たしてMRSAにバクタを使っていいものだろうか?。

バンコマイシン VS バクタ

Pubmedでこのような文献がヒットしました。イスラエルで重症のMRSA感染に、バクタ1回4錠1日2回とバンコマイシン1g1日2回では、バクタはバンコマイシンに対して非劣性を示せなかった。

バクタ1日8錠って通常投与量の倍です。それでもバンコマイシンに対して非劣性を示せなかったとのこと。ただ、目の前の症例が重症のMRSA感染かというと、ちょっと違うような気はします。よくある高齢者の誤嚥性肺炎や尿路感染です。

MRSA肺炎にバクタ有利かも、というこれまたイスラエルの文献もありました。

真のMRSA肺炎はあまりないはずなので、そこはどうなのかな~と思う所はありますが、まぁ使える可能性もあるととって良いかもしれません。

どうなったか

バクタが肺炎のMRSAに絶対だめなことはなさそうなので、バンコマイシンはとっておいて、まずはバクタ+セフメタゾールで開始することとなりました。このような場合は即座にバンコマイシンを開始できるように日々注視していきたいです。

その後、経過良好で熱型、白血球、CRP、呼吸状態ともによくなりました。抗菌薬開始前にとった培養結果は、喀痰が‘Geckler3でMRSAとESBL大腸菌、尿は培養のみMRSAが生えた、という結果でした。喀痰のMRSAも、尿のMRSAも起炎菌となることは少ないが、今回はADLの低下した患者さんだったので、そのままバクタ+セフメタゾールで継続となりました。

taku

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