抗菌薬で白血球が下がってます!

本日の相談

多分尿路感染で、ラタモキセフで現在治療中の70歳台の患者。感染症の経過自体は解熱しており良いのだが、おそらく副作用で白血球が下がっているようなデータです。どう思いますか?、別の抗菌薬のアイデアがあれば教えてほしい、との相談。

状況

70歳台の女性、尿路感染の診断でラタモキセフを使用中。直近にも尿路感染を起こしており、その時はスルバクタム/アンピシリンを使用したが、この時も白血球減少があったために、ラタモキセフに変更になった。その時は白血球減少もなく順調にラタモキセフで治療できたので、今回もラタモキセフを使っているが、またもや白血球が下がってきた、という状況。

抗生剤で白血球が下がるのはなぜ?

明確には解明されていないようだ。調べたところによると、ペニシリンなどは免疫学的機序による可能性が一つにあるようだった。薬が好中球の膜くっついて、そのくっついたものに対して、抗体が好中球ごと破壊するというメカニズムのよう。この方は、最初はペニシリンでそれが起こって、次にラタモキセフを使っているうちにまたそれに対しても好中球の破壊が起こるようになってしまったのかもしれない。

感染症で白血球が戦うために必要なのに、それが減少するというのは危険な状態です。抗菌薬の副作用の中で白血球減少はそうあることではないが、きちっと副作用があるかないか採血でフォローしておかなければならないと思う。

抗生剤はどうするか?

スルバクタム/アンピシリンがだめで、そのあと前回大丈夫であったラタモキセフも今回だめになったということは、それに対する一種アレルギーのように、再度体が反応しているかもしれない。少なくともラタモキセフはもう使えない。

そうこうしてるうちに血液培養の結果が「グラム陰性桿菌」、と返ってきた
血液培養でグラム陰性桿菌が出た場合は、「真」である可能性をまずは考える。

尿路感染で、グラム陰性桿菌、までわかったら別にβラクタム系じゃなくても選択肢はある。

腎機能も問題なかったので、ESBL産生菌でも緑膿菌でもカバーできるアミカシンを培養判明まで投与することになりました。

もう培養を取らずに抗菌薬開始するような急性期病院はないと思いますが、こういう時に培養とっておくと、確実に有効な抗菌薬が選べるので、培養を抗菌薬投与する前に採取することはやはり大事です。

その後の経過

白血球数は改善傾向となり、血液培養と尿培養はESBL大腸菌と判明した。抗菌薬を変えて、また副作用出ても嫌なので、今回はそのままアミカシンで治療。トラフ値で安全性も確認し、ラタモキセフから数えて10日間で投与終了となりました。

一件落着、ではあるが、この人が次に入院してきた時、ペニシリンもセフェムも使えないかもしれない、のは結構キツイかもしれない。

抗菌薬選択と薬剤師の役割♪

このようにある一種の抗生剤で副作用が出た場合、感染症治療のために別の抗菌薬が必要になってきます。そこに薬学的知識を持つ薬剤師の役割は重要と考えます。例えば、ペニシリンでアレルギーがあるから、セフェム選択はどれくらいリスクがあり、選択肢は何があるの?、とか、βラクタム系以外なら何があるの?、などなど。
今回は、アミノグリコシド系を選択しましたが、ミノサイクリンやホスホマイシンなんかもよかったかもしれません。

taku

シェアする