CD腸炎?っぽいです

本日の相談

肺炎でTAZ/PIPC投与中の80歳台の患者。2日前より下痢しだして、CDトキシンと抗原を測定した所、トキシン-、抗原+。CD腸炎の薬を投与すべきかどうか、という相談。

確定診断というには、微妙

CD抗原がプラス・・・C. difficileがいるということ
CDトキシンがマイナス・・・毒素産生してないから、悪い奴ではない・・・かもしれないが、感度が低いので、マイナスだから毒素産生株ではないとは言い切れない。
で、当院では遺伝子検査はできないので、これ以上は臨床状況を見ての判断となる。

臨床状況で見極めると

下痢は1日3,4回とここ数日増えたが、白血球の上昇やCr値の悪化、発熱はない。もちろん血圧の低下などもなく、重篤感はなさそう。CD腸炎ではなく、ただの抗菌薬関連下痢症かもしれない。

CD腸炎の最近のガイドライン

以前は、初回や軽症の場合は、メトロニダゾールがファーストでした。しかし2018年のIDSAのガイドラインでは、ファーストに、バンコマイシン散とフィダキソマイシンが来て、メトロニダゾールはその2剤が使えない場合に選択と変更になりました。その理由は、近年の臨床試験では、バンコマイシン散の方が、メトロニダゾールより治療成績、再発率ともに優勢であったことと、メトロニダゾールには神経毒性の副作用があるからのようです。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24799326/

メトロニダゾールはバンコマイシン散にざっくり10%程度敗北。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17599306/

ちょっと少な目のメトロニダゾールvsバンコマイシン散で、軽症ではそれほど差がつかなかったが、重症ではバンコマイシン散に軍配。

副作用が少なくて、効果が良い。じゃあもうバンコマイシン散だぁあ!
でいいのでしょうか?。

コストはどうだろう?

薬剤師としては、治療効果や副作用だけでなく値段も考えることは大事なことです。

メトロニダゾール500mg 1日3回 薬価:217円/日
バンコマイシン散 1回125mg 1日4回 薬価:ジェネリックで909円/日
フィダキソマイシン 1回200mg 1日2回 1日薬価:7887円/日

メトロニダゾールが圧倒的に安い!。

亀田病院のレクチャーのページにも、
実際はmetronidazoleで改善する例が多く、コストも低いためMetroでOK
と、書かれています。

患者さんに不利益になってはいけませんが、軽症ならば、メトロニダゾールも出番があると思います。

今回はどうなったか

CD腸炎かどうかも、症状も微妙な感じ。まずは抗菌薬終了を提案してみましたが、主治医の先生はもう少し継続したいとのこと。喀痰培養結果を確認すると、タゾバクタム/ピペラシリンでなくても大丈夫そうな菌、かつ、肺炎の症状は落ち着いていたので、セフトリアキソンにDe escalationしてもらいました。また、整腸剤も投与してもらいました。そして、CD腸炎の薬は見送ることになりました。

その後順調に下痢症状はおさまり、治療終了となりました。

taku

シェアする