ミカファンギンの投与量はどうしましょう?
本日の相談
アスペルギルス肺炎で、透析患者ということもあって、まずはミカファンギンを投与することになった。現在150㎎で投与しているが、この量で良いでしょうか?、という相談。
まずは添付文書
(アスペルギルス症)
通常、成人にはミカファンギンナトリウムとして50~150mg(力価)を1日1回点滴静注する。
重症又は難治性アスペルギルス症には症状に応じて増量できるが、1日300mg(力価)を上限とする。
まぁまぁ幅あるなぁ、という印象。50~最大300mgって、6倍も違うし、どの量がいいの?って感じ。
文献検索
https://academic.oup.com/jac/article/64/4/840/704111
成人血液悪性腫瘍患者10名から採取した48検体から、カンジダとアスペルギルスに対する有効なAUC/MICを設定し、シュミレーションを行った。結果、Candidaに対しては50mg 1日1回および100mg 1日1回の投与で95%以上の確率で目標を達成することができた。 Aspergillusに対してこの確率を達成するためには、250mg 1日1回または100mg 1日2回の投与が必要であった。
死亡率などみた試験ではなく、濃度だけみたシュミレーションですが、カンジダであれば、100㎎くらいで良いけど、アスペルギルスでは、1日200㎎以上いるんじゃないか、とのこと。
いっぱいいれて副作用は大丈夫か?
投与量を増やす、となると副作用が心配な所です。これに関しては、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24460099/
150mg と300㎎の副作用を調べた後ろ向きの研究です。人数は150㎎が58人、300㎎が26人と少ないですが、副作用(肝障害、高血圧、下痢)の頻度は全体としては、差はなく、肝障害に限ると150㎎が48%、300㎎が58%と有意差があるわけではないが、やや高い結果でした。
・・・それにしても150㎎で48%とは、やっぱり肝障害の頻度が高い薬だなぁ思う。・・・
高用量使用に関しては躊躇するほどの差があると思わないので、きっちり高濃度でせめて、肝機能障害がないか採血のたびにフォロー、で良いと考えます。
どうなったか
300㎎で!と思ったが、患者さんにそれほど重症感もなく、やはり高齢なこともあって、200㎎を推奨しました。その後経過は良好です。
まとめ
- アスペルギルス肺炎であればミカファンギンは200㎎以上の方がよさそう。
- 肝障害には注意が必要な薬だが、高用量使ったからといって、副作用の頻度がすごく高くなるわけではなさそう。