バンコマイシンが使えません!
本日の相談
透析患者さんで蜂窩織炎を疑っている。以前の足壊疽の時の創部の培養でMRSAが出ていたこともあり、抗MRSA薬の使用を考えているが、以前バンコマイシンを使った所、薬剤過敏症症候群になり皮膚がただれたので、何にしようか、という相談。
状況
50歳台、透析患者、蜂窩織炎、糖尿病もあり、感染が悪化する要素もりだくさんといった所。しっかりと抗菌薬をいれないといけない。
選択肢は?
バンコマイシンがだめ、ということで、他の抗MRSA薬、ということは、
- テイコプラニン
- ダプトマイシン
- リネゾリド
が、思い浮かびます。主治医の先生はコストも気にするので、テイコプラニンはどうか、とも思っていたようでしたが、果たして同じグリコペプチド系でどれくらい危ないか?。
バンコマイシンの後にテイコプラニン使ったらどれくらい大丈夫か?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22017186/
これによると、バンコマイシンを使って副作用が出た人38人のうち24人もの人に副作用(白血球減少、発熱、皮疹)が起こっています。
これを見るとテイコプラニンの使用はリスクがありそうな気がします。しかも、前回かなり皮膚がただれたとのことで、ひどい副作用であればより一層使いたくない気がします。
皮膚感染症で一番良さそうな薬剤は?
抗MRSA薬といっても、得意不得意があります。オールマイティなのがバンコマイシンですが、蜂窩織炎というと皮膚感染症なので、ガイドラインでは何がすすめられているでしょう?。
化学療法学会のMRSA感染症の治療ガイドライン2019年を見ると、ダプトマイシン、リネゾリド、バンコマイシンとどれもA-Ⅰの推奨になっており、テイコプラニンはむしろB‐Ⅱと低い推奨になっています。
コストは?
この方は体重がかなり重いかつ、透析患者なので、1週間のコストは・
リネゾリドは7414×2を週7回=103796円
キュビシン 13776×2を週3回=82656円
バンコマイシン 681×2を週3回=4086円
となります。
バンコマイシンが圧倒的に安いけど、リネゾリドとはどっちかっていうとキュビシンの方が安いかな、程度ですかね。
どうなったか。
結局今回はダプトマイシンが選択されました。その後血液培養陽性にならず、経過も採血のたびに悪化傾向になったため、一旦メロペネムに変更となり、改善傾向となりました。血液培養では出ませんでしたが、グラム陰性桿菌が起炎菌だったのかもしれません。