バチルスによる末梢カテーテル感染

本日の事案

本日も血液培養結果や抗菌薬の投与状況をチェックしていると、血液培養4本からバチルス、にセフェム系抗生剤が投与されている例が見つかった。これはあかんかも・・・。

状況

90歳台の高齢の患者さんで、食事取れないが、CV希望なし、末梢でアミノ酸製剤投与中、点滴漏れなどもあり、熱が出ている。抗生剤はセフェム系抗生剤が投与されているが、熱は治まっておらず、採血データで白血球やCRPも改善なし、点滴のアミノ酸製剤も投与中のままだ。

末梢カテーテル感染のセオリー

このような感染の場合、まずは原因となっている点滴ルートの交換、可能であれば抜去。そもそも末梢静脈栄養はカロリー的に中途半端なので、中心静脈栄養でいくか、胃ろうとかで栄養をいくか決めてほしい所(ただ、そこは微妙な事情があって、続けることはしばしある)。

原因菌は表皮にいてる菌がターゲットなので、ブドウ球菌、連鎖球菌、コリネバクテリウム、バチルスなど、グラム陽性菌類がターゲットとなる。

コリネバクテリウムやバチルスであれば弱毒菌なので、抜去だけで改善することもあるが、抗生剤を使う場合は使い慣れたセフェム系やペニシリン系では耐性のことが多い。

vsバチルスの抗生剤は何をチョイス?

  • バンコマイシン
  • クリンダマイシン
  • キノロン系
  • カルバペネム系

(サンフォードガイドライン)

キノロン系やカルバペネム系はグラム陰性桿菌もカバーしちゃうので、この菌に対しては広域すぎて好ましくありません。バンコマイシンかクリンダマイシンが妥当な所でしょうか。

以前、私はバンコマイシン推しでしたが、ある病棟でバチルス感染が流行った時に、バンコマイシンをたくさん使ったあと、高度耐性菌であるVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)がその病棟で検出されるという事態に遭遇しました。後日、大阪大学の某教授の講演を聞いていたら、バンコマイシンの使用量とVREの増加は関係あるとの話であったため、今後は重症でない場合は、バンコマイシン以外をメインに推奨していきたいと思っている所です

バチルスカテーテル感染の投与期間は?

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19745686/

↑によると、これは中心静脈カテーテル感染で63%がバンコマイシンで治療された文献ですが、10日以上と10日未満で入院期間などの転帰は同じであったとのことなので、カテーテルを抜去すれば10日も投与すれば十分と思われます。

今回の対応

主治医の先生に連絡し、対応を協議。先生も困っていたとのこと。
点滴ルートをとるのが厳しい、という状況から、末梢をいったん抜去し、内服できるので、口からシプロフロキサシンを投与することになりました(クリンダマイシンは今回は耐性となっていたので、選択しませんでした)。
その後、速やかに解熱し、経過は良好となりました。経口の食事摂取については、また感染と別で考えていかないといけませんが・・・。

taku

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