褥瘡からの発熱と思われます!

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本日の相談

新規入院患者、肺炎でも、尿路感染でもなさそう。重篤感はない。前回入院時にADLが低下して、家に帰ってからも寝たきりで深めの褥瘡ができて、そこがフォーカスではないかと疑っている。抗菌薬は何にしようか、という相談。

アプローチ

褥瘡感染ですか、では、グラム陽性球菌を狙ってセファゾリンでいきましょう、と電話ですぐ答えるのはやや短絡的な気がします。もちろん診断するのは医師なのですが、自分でもカルテくらいは広げてみる、できれば病棟に見に行くことが大事だと思います。私は、相談があった症例は、患者背景、直近の医師や看護師の記事、バイタル、採血データ、あればCTなど一通りみます。

本症例は、呼吸状態も悪くないし、尿検査もきれい、話してみると意識レベルも悪くない。CRPは10くらいで、白血球は10000越えとまぁまぁ高いが、重篤感は主治医の先生のいう通りあまりなさそう。

狙う菌は?

褥瘡感染の線で攻めるのであれば、表皮にいる菌=連鎖球菌や、ブドウ球菌がターゲットで良いです。問題はMRSAを想定するかどうか、ですが・・・。以下、化学療法学会MRSA薬の選択には以下のように書かれています。

MRSAの経験的治療

  • 宿主の MRSA 感染症発症リスクと感染症の重篤度から,経験的治療の適応は考慮される。
  • 重篤度の高い感染症とは,セプシス,菌血症,臓器障害を来した症例,循環動態の不安定な症例、あるいはそれかの可能性が高い症例である。
  • MRSA 感染症の発症リスクとして,入院後 48 時間以降の症例,MRSA 保菌症例,最近の MRSA 感染症の既往がある症例,血液培養でブドウ球菌と推定されるグラム陽性菌が認められた症例,グラム陰性菌に有効な抗菌薬が無効である症例などが挙げられる

重篤感はないし、過去の培養からMRSA検出も過去にないので、抗MRSA薬はなしでいって問題なさそう、ということになりました。

経過

CRPは下がり傾向だが、すっきりとはよくならない。褥瘡の見た目はゆっくりと改善傾向。なので、抗菌薬はやや効いているのかな?という経過だった。ただ、途中で、ASTと、ALT、γGTPの上昇がありで、薬が悪さをしていないか再度相談があった。薬剤性でγGTPってあまりあがらないしなぁ、でも一応薬剤の副作用疑いで、抗菌薬を変更してみようということになって、次にクリンダマイシン600mg1日3回に変更となりました。

他のフォーカスが明らかに

薬剤性を疑い、クリンダマイシンに変えたものの、AST、ALT、γGTPはよくならず、主治医がエコーを取ったところ、胆管炎が発覚!。

消化器内科に転科→ERCPとなりました。

まとめ

  • 褥瘡感染疑いで入院後、胆管炎が発覚。
  • 感染的には様子見れたので、狭めの抗菌薬で待てた。
  • 待てる間は、抗菌薬のスペクトルをやたらと広げず、フォーカス探索、菌の探索を続けることが大事。

taku

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